ファッションに限らず、すべての仕事は「人」がやること。
出来がよくても悪くても、すべて「人」に起因します。
ファッションデザイナー、パタンナー、スタイリスト、ジャーナリスト、バイヤー、経営者……数多くの魅力的な「人」に出会うのが私の半生だったとするならば、残りの時間で、ぜひそんな魅力的な「人」をより魅力的に見せる、そんなお手伝いがしたい、と思っています。
アタッシェ・ドゥ・プレスの真髄本書の最後に、フランス、いや世界でも有数のファンション・コンサルタントであり、アタッシェ・ドゥ・プレスのエキスパートでもある、P氏に、この仕事について、いくつかご質問をいたしましょう。
P氏は、世界最大のブランド帝国VMH(モエヘネシー・ルイヴィトン)グループの総帥、ベルナール・アルノー氏個人の相談役になり、そのアタッシェ・ドゥ・プレスを担当するほか、数多くの有名デザイナーやブランドのプロデュースにかかわってきた、華麗なる実績を誇る業界の第一人者であり、私の大事な友人であり、何より尊敬するこの仕事の先輩です。
そんなP氏の経験と知恵から出た一連の解答は、この仕事に就く人、この仕事を目指す人、この仕事のクライアントになる人にとって、非常に役に立つはずです。
では、さっそく聞いてみましょう。
Q国際的に認知されている海外ブランドが、それまでと変化した戦略で他の国に展開しようとするとき、そしてその戦略がたとえば日本の(または各国の)ユーザーに届きにくいと考えられるとき、アタッシェ・ドゥ・プレスはどのように判断し、行動すべきでしょうか?(回答)ある海外ブランドの世界的なイメージが、地域の特性とのコミュニケーションを図る上で妨げになることは、ほとんどありません。
大切なことは、世界的なメッセージが正確に認識されることであり、そのためにアタッシェ・ドゥ・プレスは、その国の文化や住む人々に適したコミュニケーションツールを生み出し、理解してもらわなければならないのです。
たとえば、日常生活でも、両親が子供に麻薬の危険性について注意する時、15歳の息子と7歳の娘とにでは、同じ言葉や表現を使ったりはしないのと同じことです。
Q2グローバリゼーションがますます進む今日、アタッシェ・ドゥ・プレスには、より一層の「スピード」、つまり世界レベルで同時に進行できるようにする必要がありますが、そのためには、アタッシェ・ドゥ・プレスはどのようなスタンスで活動するべきでしょうか?(回答)長い間、有能なアタッシェ・ドゥ・プレスであるためには、感じがよくて椅麓でありさえすればそれで十分でした。
しかし今日ではアタッシェ・ドゥ・プレスには世界の政治的、経済的、社会的状況を理解していることが望まれています。
そうした理解があってこそ、アタッシェ・ドゥ・プレスは手がけるブランドの発展を、その国独自の発展段階や変遷に上手に合わせ、調和させ、調整していくことができるのです。
アタッシェ・ドゥ・プレスは、商品の同じような価値や特徴ばかりを一辺倒に力を注いで前面に打ち出したりはせず、ニューヨーク、マドリード、パリ、東京など、場所に応じたプロモーションを行います。
それは、社会的風土、政治状況、そして特に購買力がかかわってくるからです。
Q3アタッシェ・ドゥ・プレスが担当する商品をメディアにアプローチするとき、メディアを選ぶ際に、判断基準にしたり、念頭に置かなければならないことは何でしょうか?(回答)まず初めに、そのブランドが、どのような消費者を理想としてターゲットに据えるかを考えるべきです。
消費者はそのタイプごとにお気入りのメディアがあり、固有の生活スタイルがあり、仕事や余暇の習慣があります。
総じて若者に関することはインターネットと携帯電話を優先する必要性があります。
ラグジュアリー層については美しくて質の高いメディアと、世間で圧倒的に支持されて主導権を持つような人々を重視します。
Q4多くの人にイメージを定着させるのがブランド戦略ですが、戦略が裏目に出て、いったん定着してしまったイメージが、ユーザーにニーズと合わないと判断されてしまうことを回避しなければならない場合、アタッシェ・ドゥ・プレスはどのようなスタンスで活動すればよいでしょうか?(回答)すべては経営者やブランド権所有者が、ブランドとそのイメージとのずれを意識しているか否かにかかっています。
そうした意識がない場合、アタッシェ・ドゥ・プレスは決定者ではないので、なす術がありません。
しかしもし意識があるなら、まずイメージの中で「時代遅れ」な点をリスト化することから始めます。
続いて、リストに上げられた点を現代の流行に合わせて一新する方法を見つけ出します。
最後に、企業の予算、目的、キャパシティに応じた段階を踏まえて、ゆっくりと、あるいは一気に、再び時流に乗せていくのです。
Q5企業側の責任による商品の欠陥が報道された場合、まず、公にむけてすばやい対応が求められますが、どのようなことに留意するべきでしょうか?また、その後の対処の仕方、イメージダウンしてしまった商品と企業イメージを修復するために、どう動くことが求められるのでしょうか?(回答)決してウソをつかないことです。
過失を認め、受け入れることですしメディアやメディアを媒介とする消費者は、その過失について理解し受け入れることができますし、逆にメディアも消費者も、ウソやごまかしや不誠実については、なかなか忘れないものです。
Q6無名の人・物を有名にするために、アタッシェ・ドゥ・プレスにはどのような役割が必要とされるのでしょうか?(回答)全てはその人物のパーソナリティ、カリスマ性、メディアを魅了する力、自分自身や自分の仕事をどのくらい語れるか、というその人物の才能の中身によって変わります。
その人物がカリスマ的であればあるほど、より一層注目され、人を魅了し、その人やその人が手がけた商品に近づきたいという人々の願望は強くなります。
どんなコミュニケーションテクニックも、何の興味もそそられないものをフォローしたり、何かで埋め合わせたりするのは不可能でしょう。
しかし、人物であれ物であれ、明らかにレアなもの、特別なもの、価値が高いものなら、どんなコミュニケーションテクニックでも効果を発揮して成功へと導いてくれます。
つまり、その人のことをどうしても知りたい、とか、その商品を何としても買わずにはいられない、という強い思いを砲かせるのです。
Q7パーソナルなアタッシェ・ドゥ・プレスと企業にかかわるアタッシェ・ドゥ・プレスの仕事上の違いは何でしょうか?(回答)基本的な点では違いはありません。
ある人物がプロデュースの対象になることもありますし、企業がプロデュースする商品を作ることもあるからです。
ただ通常用いる形式やテクニックは大いに異なります。
私たちは、その人物のアイデンティティとなる特徴、例えばその人の健康面、性格、気性、恋愛、宗教、政治というような、必ずしもはっきりしているわけではないものや、デリケートですぐ変化してしまうものを統一していく必要性があります。
こうした特徴は、財政、機械化、従業員の労使管理などに制約されている企業の特徴を取りまとめるよりも一層困難なことです。
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